障害のある方が一般企業で働くことが難しい場合、就労を支援する福祉サービス「就労継続支援A型・B型」を利用できる場合があります。
就労継続支援A型・B型はそれぞれどのような支援を行うのでしょうか。
この記事では、就労継続支援A型・B型の違いや就労継続支援で職員として働く人の仕事内容・職種、職員の求人例などを紹介します。
就労継続支援とは
はじめに、就労継続支援A型とB型の違い、就労移行支援との違いについて紹介します。
就労継続支援A型と就労継続支援B型の違い
就労継続支援は、障害のある方が利用できる障害者総合支援法にもとづく福祉サービスのひとつです。
一般企業への就職が困難な方を対象に働く機会を提供し、一般企業で働くために必要な知識や能力を身につける訓練や支援を行っています。
就労継続支援にはA型・B型があり、以下のような違いがあります。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象者 | ①移行支援事業などを利用したものの、就職に結びつかなかった方 ②特別支援学校を卒業して就職活動をしたものの、就職に結びつかなかった方 ③就労経験があり、現在は働いていない方 | ①就労経験があり、年齢や体力面で一般企業に雇用されるのが難しい方 ②50歳以上の方または障害基礎年金一級受給者 ①・②に当てはまらず、就労移行支援事業等によるアセスメントで就労面の課題等が把握されている方 |
年齢制限 | 65歳未満 ※要件を満たせば65歳以上も利用可 | なし |
雇用契約 | あり | なし |
平均工賃(賃金) ※令和元年度 | 月78,975円 | 月16,369円 |
仕事内容 | 一般企業の仕事と同程度 (パソコンによるデータ入力、カフェやレストランの接客・調理、ホテルの清掃、webデザインなど) | 軽作業が中心 (農作業、手工芸、部品加工、衣類のクリーニング、製菓など) |
利用者数 ※令和2年3月 | 約7.2万人 | 約26.9万人 |
A型の面接にはハローワークの紹介状が必要
就労継続支援A型の利用希望者は、各自治体の障害福祉課やハローワークで事業所を探します。
事業所の見学や体験を行い、利用が決まれば障害福祉サービス受給者証を発行してもらい雇用契約を締結したうえで利用開始となります。
A型は雇用契約を結ぶため面接があり、面接の際には履歴書などのほかハローワークの紹介状も必要です。
B型の求人は障害福祉課で紹介してもらえます。
就労継続支援A型・B型ともに、障害者手帳はなくても利用可能です。
ただし、手帳の代わりに主治医からの意見書や診断書などが必要です。
就労移行支援との違い
就労移行支援とは、一般企業で働くことを希望する65歳未満の方を対象に、就職に必要な知識や能力を高める訓練や就職活動のサポート、職場定着の支援などを行うことです。
就労継続支援は働きながら一般企業への就職を目指せる場でもありますが、就労移行支援は一般就労へ移行するための支援や訓練を受けることを目的とする場です。
そのため、基本的に工賃(賃金)はなく、利用期間は原則2年以内と定められています。
多機能型事業所とは
多機能型事業所は、障害者総合支援法や児童福祉法にもとづくサービスのうち、2つ以上の指定事業を一体的に行っている事業所のことです。
対象となる事業は以下の通りです。
- 生活介護
- 自立訓練(機能訓練)
- 自立訓練(生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 児童発達支援
- 医療型児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 保育所等訪問支援
- 居宅訪問型児童発達支援
就労継続支援A型事業所で職員として働く
ここでは、就労継続支援A型事業所で職員として働く人の仕事内容や職種、役立つ資格、悩みなどについて紹介します。
仕事内容
就労継続支援A型事業所で働く職員は、サービス利用者に対して以下のような業務を行います。
- 事業所内で行う作業や訓練のサポートをする
- ハローワークなどと連携して事業所外の就労先や実習先を確保する
- 利用者や家族の相談に乗り、問題解決に向けてサポートする
- 一般企業への就職活動を支援する
- 自立した生活ができるように日常生活・社会生活のサポートをする
- 利用者のニーズや課題を把握して、個別支援計画を作成する
- 自力で通うのが困難な利用者の送迎をする
職種
就労継続支援A型事業所では主に管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員が働いています。
それぞれの職種の役割をチェックしてみましょう。
管理者
管理者は事業所のトップとして運営全般の管理をするのが役割です。
職員の管理、サービスの実施状況の把握と管理、利用者や家族に対するサービス内容の説明などを行います。
管理責任者になるには、社会福祉主事任用資格、2年以上の社会福祉事業の実務経験、企業の経営経験、社会福祉施設長認定講習修了のいずれかが必要です。
サービス管理責任者
サービス管理責任者の主な仕事は個別支援計画の作成です。ほか、職員への技術指導やアドバイスを行い、利用者に提供するサービスの質を管理する役割もあります。
関係機関との連携や利用者・家族に対する相談援助も行います。
サービス管理責任者になるには実務経験などが必要です。
職業指導員
職業指導員の役割は個別支援計画をもとに、利用者に対して仕事に必要な知識や技術などを指導することです。
一般企業への求職活動および就職したあとの職場定着のサポートも行います。
職業指導員になるために必須な資格はなく、無資格でも目指せます。ただ、資格があったほうが有利に働くことが多いでしょう。
生活支援員
生活支援員は健康管理の指導や生活相談など、利用者が自立した生活を送れるように日常生活の支援を行うのが役割です。
また、サービス管理責任者の補助的な業務も行います。
生活支援員になるための資格も特になく、無資格・未経験でも挑戦できますが、資格があったほうが勤務先や仕事の幅が広がるでしょう。
生活支援員とはどんな仕事?仕事内容や活躍できる職場、向いている人を解説
役立つ資格
就労継続支援A型事業所で職員として働く際に、役立つ資格を紹介します。
サービス管理責任者
サービス管理責任者として働くには、障害のある方への相談支援業務や直接支援業務の実務経験が必要です。
必要な実務経験年数は、業務内容や取得している資格によって異なります。
さらに、相談支援従事者初任者研修およびサービス管理責任者等研修の修了も必要です。
サービス管理責任者の資格取得|サビ管になるための要件・研修、求人情報
社会福祉士・精神保健福祉士
社会福祉士は障害のある方の相談に応じ、指導やアドバイスができる国家資格です。
精神保健福祉士は、精神障害のある方の社会復帰のサポートや訓練を行える国家資格です。
社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っていると、利用者への支援やアドバイスに役立ちます。
【2021年】社会福祉士国家試験の合格率は?難易度が高いとされる理由
作業療法士
作業療法士はリハビリによって、基本的な動作能力や日常で必要な応用的動作能力、就労や地域活動への参加などに必要な社会的適応能力の維持や改善を図る国家資格です。
作業療法士の資格は、生産活動の指導や適切な実習先の確保などに役立つでしょう。
介護福祉士
介護福祉士は介護系資格で唯一の国家資格で、介護に関する専門的な知識や技術を得られます。
就労継続支援A型事業所では、利用者の日常生活のサポートや社会生活の支援に役立てられるでしょう。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護に関する基本的な知識や技術が身についていることを証明できる資格です。
年齢や実務経験など研修の受講条件は特になく、研修を修了して修了試験に合格すれば資格を取得できます。
【介護士の仕事内容と給料】介護福祉士、介護職員初任者研修の資格取得方法
A型事業所の職員の悩み
A型事業所は利用者と雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の支払いが必要です。
A型事業所では給付費を利用者の賃金に当てるのは禁止されていましたが、それを行う事業所が多くありました。中でも悪質なケースの場合、利用者の仕事を用意せず、給付金を不正受給していた事業所もあったようです。このような事業所を淘汰するためもあり、2017年4月に法改正がなされ、給付金を賃金に回すと指定障害福祉サービス事業者が取り消しになるなどの罰則が設けられました。
これにより給付金の悪用を目当てとした事業所は減りましたが、真面目に事業を行っているものの、売上だけでは賃金を賄うことができず、給付費も賃金に回していた事業所も運営が続けにくくなったのです。
そのため、職員は利用者への支援だけでなく、売り上げを伸ばさなければいけないという悩みを抱えやすいでしょう。
今後つぶれる可能性が上がるかもしれない
2021年度障害福祉サービス等報酬改定では、A型事業所の基本報酬は労働時間での算定から、収支状況や利用者の勤務状況などから評価するスコア方式に見直されます。
そのため、事業者の経営能力不足から報酬が減額される場合があり、今後倒産や休廃業となる可能性が上がるかもしれません。
ただし、スコアが上がれば報酬も上がるので、職員に向上心のある事業所であれば、現状より経営がうまくいく可能性もあるということです。
就労継続支援B型事業所で職員として働く
就労継続支援B型事業所で職員として働く人の仕事内容や、B型事業所ならではの職員の悩みについてもチェックしてみましょう。
仕事内容
就労継続支援B型事業所の職員は、A型と同じように作業支援や日常生活の支援、事業所外就労の確保・利用者への指示、相談援助、個別支援計画の作成、送迎などを行います。
役立つ資格もA型と同じです。
B型の場合も職業指導員や生活支援員は特に資格は必要ありませんが、取得しておくと求職活動の際に優遇されたり、活かせたりするので取っておくとよいでしょう。
B型事業所の職員の悩み
B型事業所には、利用者の工賃状況を良くするために仕事を確保したいが見つからない、作業と支援の両立が難しいなどの悩みを抱えている職員がいます。
他にも、利用者の障害特性に合わせた対応や自身のスキルアップなどさまざまな悩みがあるようです。
詳しくはこちら↓
就労継続支援B型事業所等の意見交換会 集計結果
サービス管理責任者の資格はtocotocoでも活かせる!
サービス管理責任者は、就労継続支援A型でもB型でも配置必須です。
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